第216章

野呂栞は怒りに任せて川崎正弘に飛びかかったが、何度手を伸ばしても掴めない。

まるで鷹がひよこを追い回すみたいに、二人は狭い場所でぐるぐると追いかけっこを繰り返す。ある瞬間、野呂栞の指がようやく川崎正弘の肩を捉えた。

――勝った。

得意げになるより早く、川崎正弘がすっと腰を落として半歩引く。次の瞬間、野呂栞の手の中に残ったのは、するりと抜けた上着だけだった。

「おい、てめぇ……どんだけ逃げ足速いんだよ!」

あまりにも身のこなしが滑らかすぎる。

どれだけ戦闘力があろうと、相手に触れられなければ力の振るいようがない。喧嘩の腕前なら川崎正弘は大したことがない――が、捕まえるとなると話は別...

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